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食事動作と上肢の働きについて4つのポイント

目次

食事とは全身の調和

「食事」とは食物が口腔から胃まで運ばれる際、全身の見事な調和と連動により行われる行為を指します。

  1. 脳機能の調和と連動
  2. 姿勢保持
  3. 上肢操作
  4. 呼吸
  5. 咀嚼
  6. 嚥下
  7. 消化吸収
  8. 排泄

今回は「上肢操作」に関して説明致します。

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上肢の機能的役割

上肢の機能的役割を担う部位は「肩」「肘」「手首」「手指」の4か所に分けることができます。

肩の役割「方向調整」

肩は人体中で、最も動く範囲(関節可動域)が広い関節となっています。上肢を目的の場所に方向づけする「方向調整」の役割を担います。食事では、目的のお皿に箸を運ぶ、箸で挟んだ食物を口に運ぶ際などで役割を果たします。

その他、肩は上肢の根本にあたる部分であり、上肢全体を支える役割も担います。

肩の筋力・関節可動域

食事動作をスムーズに行うためには「肩関節軽度屈曲(前方に腕を上げる)」「肩関節外旋(外側に腕を開く)」の動作が求められます。自分自身で「肩関節軽度屈曲・外旋」を行うための「筋力」。拘縮などの物理的な制限なく「肩関節軽度屈曲・外旋」を行うための「関節可動域」が必要となります。

肩に問題があった場合の対応方法

腕全体をバネの力を利用して支え操作する、「ポータブルスプリングバランサー」という器具があります。ただし、非常に高額であり、個人で購入するには負担が大きくなります。

そこで、肩に問題がある場合は、少し高めの机に腕を置く様にします。つまり、最初から「肩関節軽度屈曲・外旋」の状態をつくっておく手段です。

ただし、無理に前方の机に腕を置こうとすると、「体幹前傾(前かがみ)」の状態となり食事には良くない姿勢となります。そのような場合は「車椅子テーブル」などを使用すると、机上に腕を置きやすくなります。「車椅子テーブル」は肘付きの椅子でも使用することが可能です。
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肘の役割「伸縮調整」

肘は上腕と前腕を繋ぐ役割を担っています。肘の働きで手が働く場所(距離)を調節することができます。

例)肘を伸ばして机の奥にあるコップを取る⇒肘を曲げて自分の手前にコップを置く。

肘の筋力・関節可動域

食事動作をスムーズに行うためには「肘関節屈曲進展(曲げ伸ばし)」「前腕回内外(手のひらを上や下に向ける)」の動作が求められます。自分自身で動作を行うための「筋力」。拘縮などの物理的制限のない「関節可動域」が必要となります。

肘に問題があった場合の対応方法

肘の曲げ伸ばしに関しても「ポータブルスプリングバランサー」が有効となります。

その他には、机高を高めに設定することや、食器を出来るだけ身体の近くに設置することで、食器から口までの距離を短くすることを心掛けます。

また、柄の長いスプーン(パフェスプーン等)を利用を検討してみるのも良いでしょう。

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また、飲み物などもストロー付きのコップなどを利用することで、肘や肩の動きの問題を補うことができます。
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手首の役割(微調整)

手首は手指が効果的に働くために微調整を行う役割を担っています。普段はあまり意識されない動きですが重要な役割を担っています。

例)⇒例えば、目の前のコップに手を伸ばして下さい。手首はどうなっていますか?おそらく、手首をやや後ろに反った状態でコップを持っているのではないでしょうか。実は、手首を反らないでコップを持って飲もうとすると、上肢の構造的な問題にて肩や肘が開いた状態となってしまいます。これではのみ辛いですね。

手首の筋力・関節可動域

食事動作をスムーズに行うためには「手関節掌背屈(手首を手の平側や手の甲側に曲げる)」の動作が求められます。それらを、自身で行うための「筋力」や、拘縮などの物理的制限のない「関節可動域」が必要となります。

手首に問題があった場合の対応方法

手首の問題が一番顕著になるのが、スプーンや箸等を口元に持ってくるときです。口元に持ってくる際は必ず「手首の反し」が必要となります。「手首の反し」ができないと、口から迎えに行ったり、食べこぼしが多くなったりします。

「手首の反し」を補うものとして、自由に曲げることができる福祉用スプーンなどがお勧めです。
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手指の役割「効果器」

手指は、掴む、握る、つまむ、ひっかける、すくう、押さえるなどの役割を担っています。

手指の筋力・関節可動域

示指(人差し指)から小指までの手指関節は屈曲(手のひら側に曲げる)、伸展(手の甲側に伸ばす)の動作が求められます。

また、母指(親指)に関しては、①橈側外転(母指が示指から離れ外側に運動する)、②尺側内転(橈側外転から元の位置に戻る運動)、③掌側外転(手のひらに直角で、母指の前方へ運動)、④掌側内転(掌側外転から元の位置に戻る運動)など、他の指よりも自由に動きます。

以上の動きを、自身で行うための「筋力」や、拘縮などの物理的制限のない「関節可動域」が必要となります。

手指に問題があった場合の対応方法

手指は複雑な動きを行うため、問題(障害)の程度に合わせた対応方法がより重要となります。以下に問題(障害)別の対応方法を提示します。

動きはぎこちないが、母指(親指)と他の指による「つまみ動作」ができる。指の力もある程度ある場合は「クリップタイプ」をお勧めします。箸は付け外しが可能で清潔に保てます。
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こちらは、箸を適切に持てるように指の位置を固定する工夫がされています。
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指をバラバラに動かすことは難しいけれど、握る動作ができる場合は「スポンジ付き」のスプーンがお勧めです。スポンジの太さにより、指の細かな動きを必要とせずに、握る動作だけでスプーン操作が可能となります。
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握る動作も難しい場合(握力が弱い)や、手指が曲がらない場合などは「万能カフ」の使用がお勧めです。こちらは、手指の働きを殆ど必要としないものとなります。
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その他の注意点

運動失調の影響

上肢の機能を阻害する要因としては、筋力低下や関節可動域制限に加えて「運動失調(震えなど)」の影響も考慮する必要があります。

運動失調の場合は、軽い食器よりもやや重量がある方が「運動失調」が出づらいなどの特徴があります。

体幹の安定性

上肢は太い「幹(体幹)」から出ている「枝」と考えられます。いくら「枝」がしっかりしていたとしても、「幹」が不安定であれば、「枝」も不安定になります。

体幹の安定=姿勢の安定となります。上肢をみるときは姿勢の安定も考慮しましょう。

まとめ

  1. 上肢は、肩、肘、手首、手指の部位別に問題を分析する。
  2. 姿勢の安定なくして上肢の安定はなし。

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